農情人:農業は「創造業」~Metagri(メタグリ)実現へ~

新たな農業のカタチの実現を目指して「Metagri(メタグリ)」をキーワードに活動

【第2弾】タイの有機農業の老舗へ訪問~自然の水が汚れると体中の血液が汚れる?~

バンコクから出発して3時間半後、無事にカオヤイ国立公園の麓に位置する「Harmony Life Organic Farm」に到着した。

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カオヤイ国立公園の麓にある有機農園

到着後、「Harmony Life」の代表である大賀様に温かく迎えて頂き、当社の成り立ちやビジョン、タイにおける有機農業の取り組みについて教えて頂いた。

 

目次

 

仏陀からの声と健康問題が転機

大賀様は、実は43歳まで農業経験は一切なく、医療機器の販売に携わっており、当社設立直前まではタイ国支店長として赴任していた。
そんな中、転機は急に訪れた。
支店長としてタイ国内を車で移動している際に、タイで一番大きな仏陀像が見下ろすカオヤイ国立公園を通ると、「農業をしなければならない」という使命感に駆られたそうである。

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仏陀像が見下ろすカオヤイ国立公園



また、自身は体調を崩し、車いすで出勤せざるを得ない状態であったとのこと。
医療分野で働いているにもかかわらず、自身も含めて病気になる人々が一向に減らないことに疑問を持ち、いまから20年前の1999年に「Harmony Life」を設立し、農業分野に参入した。

 

故郷で目の当たりにした川の汚染

農業分野に参入するにあたり、「Harmony Life」が大切にしている理念がある。
それは、「自然と人間が調和した社会を目指し、地球の環境と人間の健康を守る」ことである。
「自然との調和」を最重要視する背景には、大賀様の幼少期の原体験があった。
高度成長期の真っ只中にあった60年前、近くの川に魚が浮いているのを何度も見かけたことが今でも記憶に強く残っているそうである。
原因は、生活汚水・家庭排水・工場排水による川の汚染である。
そのため、畑を耕し作物を育てるにあたって、農薬を一切使用せず、きれいな水のみを使用する有機農業に取り組むことを心に決めた。

 

作物が全滅、借金の繰り返し

有機農業をすると一言で言っても、当時の農業ビジネスと言えば、「同一規格の農産物を大量生産する」ために、農薬を大量に使用する農法が一般的であった。
そのため、有機農業の技術が体系化されておらず、手探りで、地道に有機農法に取り組むしか他なかった。
その結果、はじめの5年は病害虫のせいで農園の作物は全滅を繰り返した。
収入源が無い中、従業員の雇用維持や資材の購入のために銀行や友人から借金を重ね、挙句の果てには大事な農地の一部をあるドイツ人に売却するまでに至った。

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農園の中に住むドイツ人の家

試行錯誤の末、肥料用原料の重要性に気付く

追い込まれる中、大賀様はただ手をこまねいているわけでは無かった。
「なぜ、虫や病気が発生するのか?」 という疑問に対する仮説を立て続け、遂に肥料用原料に原因があることを発見する。
実は、肥料を作るにあたって不可欠な鶏糞と牛糞は市場で購入しており、腐敗菌による悪臭が酷かった。

その腐敗菌による悪臭が虫を引き寄せ、作物を弱らせていたのである。
良い原料を作るために、鶏と牛を自社農園で飼育しすることを決断し、、鶏糞と牛糞を内製化した。
飼育にあたり、餌には収穫時に出る葉物類の外葉と農園で培養しているEM(有用微生物)を混ぜて与えた。
その結果、 鶏糞と牛糞の匂いは改善され、作物が元気になり、虫が寄り付かなくなるまでに至った。
実際に鶏小屋に行ってみると、匂いはしないどころか、とても静かであった。
実は、鶏が走り回ったり鳴いたりするのは、ストレスがある証拠であるとのこと。

5年間で経験した沢山の失敗を踏まえて、ようやく有機農法で安定した生産が実現出来るようになった。

 

第3弾では、確立した有機農業を武器にどのような軌跡を辿って、タイ国内だけでなく、欧米に加工品を輸出するまで事業を拡大してきたか綴りたいと思う。

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