農情人:農業は「創造業」~Metagri(メタグリ)実現へ~

新たな農業のカタチの実現を目指して「Metagri(メタグリ)」をキーワードに活動

就農を考えている方へ!【書評】「脱サラ就農の入門書~農業で自由を手にするための5ヶ条: 農業のキャッシュポイントは無数にある」

2021年は「音声メディア元年」という声も多く、これから「音声版YouTuber」が到来する可能性が高まっている。

音声メディアのトップランナーである「Voicy」が会員数と売上を伸ばしているはもちろん、「stand.fm」は昨年8月に設立初年度にもかかわらず、Yahoo!Japanのファンドから5億円も調達を実現している。

prtimes.jp

 

私自身、ブログに加えて、音声メディア開始を検討する中で、既に「stand.fm」で発信されている農家さんである「とまたろう」さんを見つけた。

その「とまたろう」さんが今年の1月2日に発売された本をkindleで読んでみた。

 
著者の強みは何と言っても「発信力」と「継続力」である。
というのも、農家という仕事上、朝から農作業で身体を動かして力を使い、疲れているにもかかわらず複数のメディアでの情報発信を継続している。
メディアは、Youtubeはもちろん、インスタやstand.fmやブログ。
どのようにして、そのような継続力を発揮できているのか、農家だけでなく、皆が気になるところで、同様に見習いたい方が多く存在する気がした。

  • 本書のポイント

  • 農業には職人と経営者の両方のスキルが必須

「職人タイプ」と「経営者タイプ」に分類できるように感じます。「職人タイプ」は主に畑に張り付いて、上質な作物の生産に長けている。「経営者タイプ」は畑を従業員に任せて、本人は主に人に会ったり、新規ビジネスの立ち上げや、販路開拓に長けている。

農業を継続するために、上記の2つのスキルが必須である。

今までは、「職人タイプ」だけのスキルを持っていれば、市場向けに農協経由で安定生産・出荷で収益は実現できたかもしれない。

しかし、これからの時代は大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済システムから脱却し、本当に必要なものだけで暮らす動きが進んで行くと考える。

そんな中、「職人」として、いいものを作るのはもちろん、「経営者」としてどのような方に向けた商品をどう工夫して作り、ファンを獲得していくか、各農家自身で考えることが求められると感じる。

 

私が5年間で学んだことは、どちらもやらなければ続けていけないということです。作物の品質を上げながら、販路開拓と新規ビジネスを立ち上げていく。その両輪を常に回しながら改善していくことが、農業経営にとって大切なことです。撤退していった農園はどちらかの能力が欠けていると分析

著者も就農5年で両輪でスキルを磨き続けて、事業を継続しながら、新たなチャレンジを続けている。

言うは易く行うは難しであるため、それをやる秘訣を具体的に知りたい方も多くいるだろう。

 

  • 複数の販路を開拓

ミニトマトは個人経営八百屋さん、ネット直販、マルシェ。きゅうりは直売所。菜花、わさび菜は直売所、スーパー。こんなカタチでそれぞれの販路にハマる売り方があるので、試して、改善して、しっくりくる売り方を構築

著者は市場には出荷せず、BtoBとBtoCを基本に販売している。

特に、作物の特性に応じた販路先を定義しているため、販路開拓に悩む農家さんには非常に参考になると考える。

どのようにして、作物ごとに、販路の棲み分けを定義しているのか、背景や具体的な改善プロセスを知りたい方も多くいると考える。
恐らく、高付加価値で売りやすいミニトマトはストーリーと併せて売りやすい、八百屋やECでチラシや販促POPのようなツールと組み合わせながら、ファンを募っていき、きゅうりのように差別化難しい作物は直売所に並べるという棲み分けと予想する。
 
  • 農業を始める際の注意点

私が最初に借りた畑は20年間耕作放棄されていて、木や草がぼうぼうなところを開拓しました。しかし20年の間に溜まった水分は抜けずに、抜本的な土木工事を行う以外に解決する方法がなく、今では耕作していません。まあ農地選びに失敗したわけです。こんな例は全国各地で聞いたことがありますので、ぜひ慎重に探して欲しいのですが、いわゆる良い農地の情報は新規就農者には入ってこないことが多いです。
新規就農者にとって、一番重要で一番難しいのはやはり「土地選び」である。
もちろん、水はけがよく、日当たりがよく、災害が少ないところが一番良いが、そんな特に、よそ者にはそのような優良農地は入手困難である。
仮に、見知らぬ土地で農業を始めるのであれば、選り好みせず、まずは地域に入り込み、農業に真摯に取り組むことで、地域で信用を獲得できれば、優良農地の情報は自ずと回ってくるとのこと。
小規模でも農業を始め、自身の取り組みを発信し、当たり前のことを地道に継続することが、農業で成功する秘訣なのであろう。

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まっさらな農地
 
  • 次回への期待

YouTubeでの動画資産の構築、stand.fmでの音声コンテンツ資産の構築、そしてまさにkindle出版によるテキストコンテンツ資産の構築です。不動産資産は簡単には作れませんが、デジタルコンテンツ資産は誰でも作れます。
著者は今年より「note」というブログでの発信により、トマトのブランディングにもチャレンジされている。
お金とは一線を画す、多くの資産を積み上げて、たくさんの共感者や賛同者を増やしていく著者の取り組みには今後も注目して行きたい。
次回、著者の「発信力」と「継続力」の秘訣を教えてくれるような本が発売されることを密かに期待している。