農情人:食と農の現地情報を発信

農村に訪れたときの体験記や食・農業について綴る

長野のレタス農家から学ぶ「魅力的農業」の作り方

朝4時半、目覚ましで目を覚ます。
「体が鉛のように重く感じて、身体の節々が痛い。。。本当に起きれるのか?」
これは私が長野の高原にて、2日目の迎えた朝の出来事である。

今回は長野での住み込みのアルバイトの経験と著書「儲かる農業」から得た知見をもとに魅力的な農業にするにはどうすべきか綴る。 

 
目次

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魅力的な農業実現のために

長野のある村での住み込みの農作業アルバイト

私自身、大学生のときに夏の繁忙期に1ヶ月間住み込みでアルバイトをした。

条件は日給6千円で食事と宿泊付き、現場を知りながら給与ももらえる点は魅力的。作業内容は収穫がメインであった。 

とにかくきつかった1ヶ月 

露地栽培であるため、基本的に、前屈みになっての収穫作業が中心であった。
朝に出荷を終えると昼からは出荷資材となる段ボールの箱折りや苗の定植など夕方までひたすら働いた。
1ヶ月働いた結論から言うと、筋肉痛が半端ではなく、毎朝、身体が重かった。そんなキツイ作業のため、日本人はもちろんのこと中国人も集まらない。現在では、フィリピン人やカンボジア人やベトナム人の作業員に依存しているのが日本の大産地の現状である。

周りの農家さんは仲間なの敵なの? 

その農家さんの販路は卸売市場のため、JA(農協)経由での出荷がほぼ100%であった。*1
市場価格は需給で大きく変動し、気候が良くて周りの農家さんがみんな豊作の時は相場が暴落する。そんなときは収穫作業や出荷資材や市場までガソリン代が高くつくため、レタスを潰すことも・・・。衝撃的な事実である。
そのため、農家さん同士は協力することもあるが基本的にライバル関係。
農薬のレシピや使うタイミングなどは独自ノウハウのため隠し合うのが常識。

JAの組合を抜けると村八分!?

農家さんの中には、企業と直接取引するため、JAの組合を抜ける方もいる。
直接取引のメリットは、数量と単価を予め契約するため市場に左右されることはない。
そのため、市場価格に左右されず経営において収支の予想が立てやすい。
しかし、その村における一番のデメリットは村の中での関係性である。
地域にもよるが、レタスの大産地であるその村ではJAの存在は0か1であり、「JA以外への出荷=組合を抜ける」ことが前提。一度抜けたら二度と戻ることは出来ない。
そのくらい、JAが力を持っている村であった。
そのため、村八分とまではいかないが、村の人たちから組合を抜けた人という目で見られてしまう。
ムラ社会というのは、助け合いで良い面も多いが、新しいことをするときにはどうしても足枷となってしまう。
 

大量生産の三重苦の先にある魅力的な農業

農業を魅力的にするためには、少なくとも下記の三重苦を乗り越える必要があると考える。
  1. 豊作貧乏
  2. 外部環境の影響
  3. 農作業による身体への負荷
それぞれの課題を著書「儲かる農業」をもとにどう解決するか考えていきたい。

1.豊作貧乏

村八分となるリスクはあるが、長期的に見て収支を安定化させるためには自分で顧客を掴むことが何よりも重要。
著者であるトップリバー代表の嶋崎さんの考えでは生産だけではなく営業に力点をおいている。
農業を他の産業分野と同様、ビジネスとして成立させようとするなら、生産にしか関わらないという態度ではダメだ。営業・販売セクションも持ち、どうやったら多く、より高く、より的確に買ってもらえるかを検討し、売り込まなければならない。*2
例えば、生協から「エコレタス」*3の生産を相談されたとき、初年度は天候の影響で失敗を経験した。
しかし、そこで諦めずに課題を乗り越えてレタス全量を「エコレタス」に切り替えた。
その結果、新たな取り引き先からの受注が増えて、利益率向上に貢献した。
この考え方は、和郷園代表の木内さんと通ずるところがある。
たとえどんなに大きな課題があっても、顧客の声を真摯に聞いて実現化させていく強さが必要となる。
どうしたら、売れる商品ができるか。どんな産業分野であれ、ビジネスの基本はそこにある。*4

2.外部環境の影響

自然環境の中での栽培であるため、どうしても災害や病害虫被害は発生する。
そのような毎年変化する環境の中で、どのように被害を最小化させる準備をして、緊急時に臨機応変に対応できるかが重要。

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山口県宇部市で農業を営む農家さんで紹介したが、被害を最小化させるためには「天候や災害に左右されない圃場づくり」が必要である。
また、単一作物ばかりを生産すると、どうしても連作障害が発生し、病害虫が発生しやすくなる。連作障害を防ぐためには、「輪作」という手法で異なる作物を毎年順繰りに生産することが必要。

そのためには生産方法の確立はもちろん、「1.豊作貧乏」で言及したような販路開拓が必須条件となる。

3.農作業による身体への負荷

身体への負荷を減らすために、いつもの作業を工夫することが重要である。
イデア次第で作業方法は大きく改善でき、楽に速く作業を実現することは可能。
コンテナ出荷のほうが段ボール出荷に比べ収穫速度が1.4倍も早かった。*5

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コンテナのイメージ
私がアルバイトしていた農家さんは、規格外である小さすぎる野菜は野菜ジュースの生産メーカーに出荷するため一部コンテナを使っていた。
しかし、一般的に、JA経由で市場へ出荷する場合、JAが指定する段ボール資材での出荷が前提となる。そのため、コンテナに切り替えるためにはコンテナ出荷が可能な販路開拓が必要。
作業時間や手間や資材コストを考えるとコンテナ出荷はメリットが大きい。  

変化する農業界と後継者育成の重要性

とはいいつつも、いまでは農業界は変わりつつある。
JAですら変わりはじめている。かつて農業生産法人とJAは犬猿の仲で、私がJAに野菜の供給をお願いにいったとき、最初はけんもほろろの扱いだった。それが現在は売買契約を交わし、JAから年間一億八〇〇〇万円ほどの野菜を買っている。*6
また、農協の存在意義については、改めて記事にするがJAは国からの縮小圧力を受けて変化している。
次の日本の農産業を支えるのは私たちの世代である。
以前、紹介した「こと京都」もそうだが、トップリバーでも後継者育成には余念がない。
トップリバーに入社する研修生は生産ノウハウをみっちり叩きこまれる。特に重要なのは、「なぜこの作業が必要なのか」を理解して作業に取り組むことであるとのこと。
例えば、病害虫予防のための防除を実施する際、何のために、いつやるべきかということを論理立てて説明できることが重要となる。
私が目指しているのが、二〇一五年(平成二七年)までにトップリバーの人材育成システムやノウハウをマニュアル化するということである。農業はただ農作物を栽培すればいいのではなく、販売の問題やJAとのつきあいもある。そのあたりもすべて紹介する。野菜だけではなく米や果物づくりなど、たくさんの農家が活用できるマニュアルにして、これを農林水産省経由で全国に配布してもらうのである。*7
本書はどうやって農業を魅力的な産業にするか見つめ直したい方だけでなく、今後の私たちの食を支える農業がどう変化していくのか考えるきっかけにしたい方にオススメの1冊である。
 

今回の内容は音声でも配信しています。
 
今回も最後まで読んで頂きありがとうございます。

*1:農協の定義する規格から外れた小さすぎたり大きすぎたりする野菜は野菜ジュースの生産メーカーに出荷。

*2:P61より

*3:土壌殺菌や除草剤散布や危険農薬を使用しない栽培方法

*4:P43より

*5:P92より

*6:P126より

*7:P127