【第3弾】「農業DeFi=FarmFi」で農業資金調達を実現!~これからの資金調達に欠かせないブロックチェーン~
「DeFiにより、持続可能な農業に向けた資金調達が実現できる!?」
これまで2回にわたって「DeFi×農業」をキーワードに
「DeFi」の可能性を紹介してきた。
第1弾では、「DeFiとは何か!?」を紹介した。
そして、第2弾では「日本における農業金融の課題」を取り上げた。
今回、第3弾では「DeFi×農業」によりどんな未来が実現できるのか、現状、活用できるブロックチェーン技術をもとに紹介したい。
ブロックチェーン技術を活用した資金調達の具体例として、スイカとNFTを掛け合わせた事例を挙げている。
農業を軸とする〝ニッチな〟内容ではあるが、
次のような方にとって有益となるよう執筆している。
✓ 「DeFi」のような新たな技術の仕組みに興味のある方
✓ 企業で農業を掛け合わせた新規事業を検討している方
✓ IT関連の注目ワードに対する理解を深めたい方
あなたの活動の一つに「DeFi」を取り入れて、
新たな挑戦のきっかけになればありがたい。
目次
「農業×DeFi」のミッション
DeFi(Decentralized Finance)の特徴は何と言っても、〝管理者不在〟であるため手数料が格段に安くなる点だ。
資金移動のような手続きが属人化しないため、公平な取引が24時間いつでも実現可能である。
そんな仕組みをどのように農業に転用するかを突き詰めていきたい。
そもそも、農業金融の課題とは何だろうか?
第2弾「農業金融を牛耳る農協」で紹介したように、
農家のキャッシュフローが悪化しやすいビジネスモデルである点だ。
農業はどうしても、種や苗の植え付けや農業資材への〝投資〟から、売上による〝回収〟までに時間を要する……。
また、栽培中は天候や病害虫の影響で不作になるリスクを抱え続ける……。
まさに、〝ギャンブル〟のようなビジネス構造である。
そんな、ハイリスクとも言える農業事業に、新参者が挑戦しやすい風土を整えることが、「農業×DeFi」のサービス設計に求められるだろう。
現状、「DeFi」により実現されている仕組みは、購入した暗号資産を預け入れして(プール)、利子を稼ぐようなものだ。
高金利の銀行預金のようなサービスが主流となっている。
一方で、農業でそのような仕組みが出来上がるのはもう少し先と考える。
そこで、今回は短期的な「農業DeFi」として、NFTを活用したサービスと特徴を紹介したい。
短期的「農業DeFi」~NFTを活用した資金調達~
まずは、本ブログで何度か取り上げた「NFT※」による資金調達を紹介する。
※Non-Fungible Tokenの略
NFTの特徴は「オンライン上で発行された唯一無二の〝証明書〟」であるため、どんなときも1つのNFTに対して、保有者は一人のみである。
現状、NFTと呼ばれる仕組みは手順さえ押さえていれば誰でも活用できる。
ポイントは、「何をどうやってサービス化するか」を具体化することが成功のカギである。
今回、NFTを掛け合わせた資金調達で紹介したいサービスは「農作物のサブスクや年間パスポート」のような仕組みである。
最近、AmazonのKindleアンリミテッドやAudibleなど、月額課金により、対象のコンテンツが読み放題/聴き放題の〝サブスク〟はよく見受けられる。
また、〝年間パスポート〟は遊園地などで良く見られるサービスである。
そのようなサービスをNFTの活用により、気軽に農家にとっても実現可能である。
サービス実現の手順は次の通りである。
① 提供する農作物をもとに「収穫可能時期」と「出荷頻度」を定義する。
② ①で決めた「収穫可能時期」「出荷頻度」をもとに1顧客あたりへ出荷する回数から目標とする年間売上を算出する。
③ 提供する「対象顧客数」を定義する。
④ ③で決めた「対象顧客数」ど同数のNFT発行に向けてデザインを準備する。
⑤ ④でデザインしたNFTを発行する。
⑥ ⑤で発行したNFTをプラットフォームに出品して販売する。
この一連の流れが実現できれば、作付けの段階から資金を調達することが可能だ。
手順だけでイメージが湧かない方は、当手法で資金調達に挑戦した「スイカ×NFT」のプロジェクトを参照いただけるとありがたい。
・20体限定スイカNFT「Metagri Labo Suica Collection(略称:MLSC)」
「なぜ、サブスクのサービスをわざわざNFTでやるのか?」
「NFTと言っても、クラウドファンディングと同じ仕組みなのでは?」
そんな疑問が生じるかもしれない。
NFTの利点は次のようなものが挙げられる。
✓ 二次流通可能
✓ 脱プラットフォーム
✓ 永久不滅
それぞれ次項で説明する。
「二次流通」の仕組みにより農作物の受け取る権利を売買できる
一般的なサブスクでは実現できないことがNFTにより実現できる。
なぜなら、NFT保有者はいつでも自由にNFTを転売できるからだ。
NFTに対して「農作物を受け取る権利」を紐づけする仕組みを構築すれば、NFTと農作物を受け取る権利を自由に売買できる。
例えば、6月にNFTを購入後、8月まで農作物を受け取る権利を行使した後、転売するとする。※もちろん買い手が存在することが前提である。
その結果、9月以降は新たなNFT保有者が農作物を受け取る権利を行使できる。
また、NFT転売による売上の一部を発行者である農家も利益として享受できる。
転売が生まれるほど、農家にとっても〝おいしい話〟となる、不思議な仕組みが実現できるのがNFTである。
「脱プラットフォーム」により手数料引き下げと自由な取引を実現
あなたはクラウドファンディングのプラットフォームを利用したことがあるだろうか?
プラットフォームによるが、クラウドファンディングの「サービス利用料」の相場は調達額の10~20%である。
もちろん、プラットフォーマーが顧客開拓の支援をしたり、サービスページを準備したり、資金調達の成功に向けて後押しするための必要経費とも言えるかもしれない。
一方で、課題は、一つのプラットフォームでクラウドファンディングを実施した際に、他のプラットフォームを活用して集客できない点である。
クラウドファンディングのプラットフォーマーからすると、同一のプロジェクトを他のプラットフォームで実施することに後ろ向きな点はうなずける。
しかし、NFTであれば、独自コントラクト※と呼ばれる手法で発行すれば、出品先は自由に複数先を選択できる。
※独自コントラクトの詳細説明やノウハウは、6月中に出版予定のKindle出版で紹介する。
現在、世界的に有名なNFTプラットフォームは「Opensea」である。
当プラットフォームの販売手数料は「2.5%」である。
もちろん、決済手数料を含めた割合である。
自身で販促する必要はあるが、格安の手数料と言えるはずだ。
万が一、他のよりよいプラットフォームを見つけた際に、並行してNFTを出品することが可能である。
ブロックチェーンの仕組み上、どのプラットフォームでNFTが売れたとしても、売れた情報が出品している全てのプラットフォームに自動で連携される。
NFTは次世代クラウドファンディングと言っても過言ではないかもしれない。
「永久不滅」のNFTで顧客と生涯つながりつづける
先ほど紹介したように、NFTの活用により脱プラットフォームを実現できる。
結果、出品しているプラットフォームがサービスの提供を終了したとしても、NFTは永続する。
一度、NFTとして発行すれば、ブロックチェーン上に発行者の情報が書き込まれる。
そして、購入者が現れれば、その情報も書き込まれる。
ブロックチェーンが存続する限り、
「誰がいつ発行したNFTであるか」
「誰が誰にいくらで販売したか」
「誰が現状の保有者であるか」
のような情報が残り続ける。
そのため、農作物のサブスク提供が終わった後であっても、NFT保有者限定で農作物の優先購入権や割引券の提供はもちろん、体験農園のようなサービスを提供できる。
〝クローズドな〟コミュニティづくりがNFTにより実現できるのだ、
この、〝クローズドな〟コミュニティづくりこそが、2022年6月現在、NFTで提供できる一番の提供価値だと捉えている。
これまでに紹介してきた「NFTの特徴」により、作付けタイミングで割安な手数料で資金調達が実現できる世の中が近づいている。
仮に、資金調達後、不作であっても、そのリスクを出資者と共に負う仕組みも実現可能なはずである。
残された課題はウォレット普及率と利用の煩雑さ
「農業DeFi」実現のために、NFTを活用した資金調達とサービス設計を説明してきた。
ではなぜ、2022年6月現在、NFTを活用した資金調達が一般化していないのだろうか?それは、現段階では、NFTの購入手続きの煩雑さにあると考える。
詳しくは、「購入手順紹介」ブログで説明しているように、ウォレットと呼ばれるアプリの導入から購入まで7つものステップがある。
どのステップにおいても〝つまづきポイント〟が多数散らばっている。
そのため、初心者にとって、すべてを円滑に進められるのは稀である。
ここで、NRI が 2021 年に実施した「生活者1万人アンケート」調査結果を紹介する。
2021年時点で、暗号資産保有者率は「1.7%」であった。
※参考:「生活者1万人アンケート」調査結果に見る消費者の暗号資産保有行動 |2022年 | データで読み解く金融ビジネスの潮流 | 野村総合研究所(NRI)
ビットコインのような暗号資産は、ウォレットを持たずとも取引所での口座を開設すれば日本円で購入できる。
そのため、実際に「ウォレット」を保有して、NFT を取引できる状態にある人口比率は 1%未満であることは自明である。
少なくとも、「ウォレット」が一般化していくことがNFTの普及においては前提条件である。
今からNFTが普及した社会に向けた準備を始めるのは、少し早いかもしれない。
しかし、近い将来、NFTが一般化した後、「DeFi」の仕組みが一気に加速化すると確信している。
ぜひ、今からNFTの世界に足を踏み入れて、「DeFi」が主流となる世界の想像を膨らましてみてはいかがだろうか?
「農業×DeFi(=FarmFi)」のシリーズは、この第3弾で幕を閉じる。
一方で、今回、紹介しきれなかった「DeFi」が一般化した世界の様子について、6月中にKindleストアで出版予定の『農業の常識を超越する「Metagri」~これからの資金調達は「FarmFi(=農業×DeFi)」~』で紹介する。
新たな発想を惜しみなく盛り込むため、期待していてほしい。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。