梨の栽培作業を手伝いながら梨の奥深さを学ぶ
梨の出荷は夏からであるが、5月は梨の摘果作業や成長促進のためのジベレリン処理など、何かと作業が立て込む。
作業のピークを迎えるいま、近所の船橋にある梨農園でお手伝いをする経験を得た。
なかなか経験することの無い梨の栽培作業を通して知った「梨の奥深さに」を綴る。
梨が大好きな方はもちろん、農業において重要な考えも含んでいるので、農業や食に興味のある方は一読頂けると嬉しいです。
目次
実はたくさんある梨の品種
皆さん、梨を買うときに品種を意識したことはありますか?
現在、日本では「梨」とひとことで言っても20種類の梨が存在する。
品種が変わると栽培方法が変わり、栽培管理が難しくなるにも関わらず、なぜ梨農家さんはわざわざ複数の品種を作るのか。
苦労してまで複数品種を栽培する理由
理由は大きく3つある。
1.顧客満足度の向上
2.出荷時期の平準化
3.リスクヘッジ
それぞれ詳しく説明していく。
1.顧客満足度の向上
私自身、梨の食べ比べをすることはないが、品種によって硬さや味わいが異なる。
例えば、日本全国での流通量が最多の「幸水梨」は酸味が少なく甘い梨である。
重量は300g程度であり、梨の中では中ぐらいのものである。
重量は「豊水梨」より一回り大きく、大きいもので500gのものも存在する。
このように品種によって味や大きさが異なるので、多種多様な顧客の好み合わせて複数品種を生産する農家さんが多い。
2.出荷時期の平準化
梨の収穫時期は8月~10月であるが、品種によって旬が異なる。
8月のお盆にお供え物として梨を購入する方は多いが、この時期に収穫する品種は「幸水梨」が主である。
農家さんによっては出荷時期を前倒しするために、「ジベレリン処理」により1週間ほど前倒しするテクニックも存在。
今回のお手伝いでは、この「ジベレリン処理」である。
作業はシンプルで、子どもの梨の茎に油に包まれた薬剤を塗るというものである。
一方で、「あきづき」という梨の品種は名前の通り、9月中旬の秋から旬を迎える。
このように出荷時期をずらすことで、作業のピークを減らして、長い期間、販売できる体制を作っている。
3.リスクヘッジ
複数品種の生産は、天候や病害虫に対するリスクヘッジに繋がる。
例えば、大ぶりの梨として紹介した豊水梨は「みつ症」という病気を発症しやすい。
人体に害はなく、梨自体は食べられるが、果肉が半透明になり腐っているように見えるため規格外扱いとなる。
実は、この「みつ症」という病気は昨年に千葉で例年より多発した病気である。
原因は7月に低温が続いた上に、梅雨が長かったためである。
品種によっては、こういった気象の変化により影響を受ける。
そのため、複数の品種を栽培することによりリスクヘッジに繋がる。
持続可能性の追及には品種の多様性は欠かせないキーワードである。
梨だけでなく、あらゆる作物において品種の多様性を実現することで、我々にとっても飢餓に対するリスクヘッジとなる。
過去から未来へ繋ぐ新品種の存在
各都道府県では、生産と販売の観点から新品種の開発を粛々と進めている。
実は、生産量No.1の千葉県が22年ぶりに新品種を開発した。
その名は「秋満月(あきみつき)」である。
千葉県知事である熊谷さんも昨日、ブログで紹介するほどの注目品種である。
特徴は、豊水より大きい上に、高糖度であり日持ちがするという点である。
噂によると、常温で約1ヶ月も日持ちするため、他の梨よりも販売期間を長くすることが可能そうである。
上市はこれからであるが、どんなものか今から楽しみである。
今回、お手伝いさせて頂いた梨農園でも少しお試しで生産しているとのことであった。
また、改めて新品種のお話を聞いてみたいと思う。
品種についてさらに詳しく知りたい方はこの本がオススメです。
次回は「梨の高密植栽培と成長促進で儲かる農業へ」をテーマに綴るので
ぜひ、期待していてください。
ぜひ、期待していてください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。