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タイを訪問~農村におけるオーガニックコットン栽培・加工~【第2弾】

タイ訪問記の第2弾として、タイの農村におけるオーガニックコットンの栽培と加工の過去と現状について綴りたいと思う。 

 

今回訪問した農村は、東北部にあるルーイ県と呼ばれる地域である。

当地域においては、FolkCharm Co.,Ltdの代表であるMs.Patsyがオーガニックコットンで生産した布を買い上げ、「FolkCharm」というブランドで高単価で販売している。

http://www.folkcharm.com/folkcharm-travels-1.html

FolkCharm Co.,Ltdの活動を学ぶためにMs.Patsyのアテンドのもと視察を行った。

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                   完成品のサンプル

 

まずは訪問した農村の歴史を遡りたいと思う。

30年前は換金作物(Cash Crop)として、トウモロコシ、キャッサバ、ゴムなどの生産を行い、販売する。いわゆるプランテーション(単一作物の大量生産)である。
化学肥料や農薬を積極的に使用し、同一面積における生産量の増加を図っていた。
また、古来種から外来種の作付けで多様な作物の生産が始まっていた。

 

10年前からタイのあるNGOが開発を担うようになり、生産した布の買い上げを行なうようになり、コットンの栽培と加工へシフトしていった。
栽培だけでなく、加工による付加価値の収入もあったため、収入向上には寄与したようであるが、NGOの独占状態となる。

結果、農家は適正価格や最終製品の状態を知らないままNGOの言い値で販売していた。

 

そして、2年前よりMs.Patsyが当農村と出会い、オーガニックコットンの栽培を奨励し、買い取り価格の引き上げにチャレンジするようになる。

※農薬を使わず手間がかかるため原価は上がるが、人体被害と土地への悪影響は抑えられる。

また、最終製品である衣類や小物も積極的に生産者へ共有し、喜びを分かち合う。

その結果、販売先の選択肢を広げることに貢献し、収入とやりがい向上に繋げている。

 

実際に、「糸の紡ぎ」を体験してみた。

とても神経を使う作業であり、油断すると糸が切れてとても時間を要する。

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下記、加工プロセスを図式化したものである。

1ロール40mの布にするまで相当な時間を要する大変な仕事である。

※パートタイムで働く農民が手掛ける場合、長くて3か月かかることもあるそうだ。

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オーガニックコットンの栽培と加工は時間を要し、とても大変な作業であるが、完成品である1ロール40mの布の売り上げから生産者に還元できる給与は一人当たり、6,000THB(2万円)程度である。

月に6,000THBあれば農村においての生活費はこと足りるが、問題は病気などの突発的な支出に耐えられないリスクが潜在することだ。
タイの医療費は物価からみて相対的に高額であり、医療保険に加入していても、負担額は少なくないため、日々、貯蓄を行うことが必要である。

そのため、「農村における持続可能な開発」の実現においては安定した給料はもちろん、貯蓄を促すことや、健康に対する意識を高めるなど、潜在するリスク回避を提供することも必要条件であると感じる。

 

今回は訪問した農村の歴史とにおけるオーガニックコットンの栽培・加工の紹介を行ったが、次回は「農村における持続可能な開発」をテーマに綴りたいと思う。