有機農業の可能性とは!?~2050年までに日本全体の有機農地を25%に~
有機農業が広まらない3つの理由
1.有機農地にするまで時間がかかる
もちろん、個人でブランド化して高付加価値作物として高単価での販売が可能であれば利益が出るかもしれない。
しかし、ブランドも有機農地と認められるまでに時間がかかるのと同様に一朝一夕にはいかない。
2.農業資材が割高で収量が減る傾向
作物にもよるが、この化学肥料と化学農薬が農作物の原価に占める割合は10%にも満たないことが多い。
一方で、有機資材として、天敵を使った虫対策や菌資材を使った病気対策は化学生産物と比べて割高である。
3.手間がかかるが収量が減る傾向
除草剤のような、化学農薬を使えば死滅させることは可能だが、有機資材で除草するアイテムは私自身知らない。
そこまで手を加えて除草をしても有機栽培で生産すると、2.でも説明したように収量が減少する傾向がある。
有機農業の可能性
その理由は、有機栽培で儲かる農業を実現している農家も存在しており、新たな技術もどんどん出てきているからである。有機栽培の農作物に対するイメージも高まっているので仮に慣行農業の農作物と販売価格を同等レベルにまで落とすことが出来れば、市場をひっくり返す潜在能力はある。
今回はそんな潜在能力を体現したような、「ムスカ」と「ふしちゃんファーム」という2つの会社を紹介する。
ハエが技術革新の切り札
みなさんは「ハエ」と聞いてどのようなイメージがありますか?
ハエというと、「汚い」「気持ち悪い」「病気を媒介する」などネガティブなイメージが強いのが一般的である。
そんな、「嫌われ者」のハエを活用して、有機肥料を生産するベンチャー企業を紹介。
その会社名は「ムスカ(MUSCA)」である。社名の由来である「ムスカ・ドメスティカ」は「イエバエ」の学名である。
当社はイエバエに命をかけて事業を創造している。
この会社の特徴はなんと言っても、45年間にもわたって1100世代以上、品種改良し続けた“最強のイエバエ”を持っている点である。
このイエバエを活用するアイデアに着目したのは旧ソ連であり、起源は今から半世紀前に遡る。
国家プロジェクトとして、宇宙船内でのバイオリサイクルにハエを活用する技術開発であった。宇宙船内で宇宙飛行士の排泄物をハエが分解して資源に変えることにより、循環する仕組みの構築に挑戦。
しかし、そんな夢のある研究はソ連崩壊により頓挫してしまう。
その技術に目を付けたある日本人が権利を買い取り、1990年から日本国内での研究に繋げる。
そこから品種改良を繰り返し続けて、2016年にようやく量産化の目途が付いたため遂に事業化に踏み出す。
ハエの分解スピードは超高速で「飼料」と「肥料」が生産される
技術のポイントは、牛や豚のような畜産の排泄物をハエの幼虫が食糧として物凄いスピードで分解して、ハエの幼虫の排泄物が肥料になる。
さらに驚きなのは、大きくなった幼虫は飼料として魚や畜産の餌になるという何とも循環型社会を体現したような仕組みである。
現在、ムスカは事業化に向けた実験段階のため、スケール化はこれからである。
数年以内には、イエバエ工場の畜産地域に建設していき、排泄物を有機肥料に変える仕組みをどんどん構築していくことが予想できる。
すると、有機肥料のコスト低下にも繋がり、有機農地の土づくりを加速化させる可能性を秘めている。
冷蔵設備への積極投資による在庫コントロールがカギ
この会社は、こまつなやほうれん草など6種類の葉物を1ヘクタール規模のハウスで栽培している。
実は、この会社はコロナ禍や悪天候ももろともせず、売上を堅調に伸ばしている注目すべき会社である。
なぜ儲かり辛い有機農業において、逆境をもろともせず右肩上がりの成長を実現しているのか?
それは、栽培作物の鮮度保持のための冷蔵設備に積極的な投資をしていることにある。
冷蔵設備を導入した結果、収穫後3週間、鮮度を保つことができて、販路先をじっくり選定することが可能。
一般的に、葉物野菜は収穫後3日も経てば、萎れてしまうため売り物にならない。
そんな常識を大きく打ち破り、鮮度を維持する設備を自社で持つことで、コロナ禍で激減した外食チェーンや給食への出荷を、ECのような直販やスーパーのような小売店に機動的に切り替えた。
その結果、売上の単価を向上させて、窮地を乗り越えた。