農情人:農業は「創造業」~Metagri(メタグリ)実現へ~

新たな農業のカタチの実現を目指して「Metagri(メタグリ)」をキーワードに活動

大規模農業とSDGsは親和性が低い!?

今回は、家族農業と大規模農業の違いや、家族農業の重要な役割を著書「13歳からの食と農」をもとに綴る。 

 
目次 

結論

エネルギー効率性から見ると、「家族農業」>「大規模農業」。
「大規模農業」は短期的な利益追求のため、農業資材や機械やエネルギーの使用に頼りがちになる。
 

世界の食を賄う「家族農業」

「家族農業」の3つの驚くべき数字

本書には「家族農業」に関する3つの数字が記載されていた。
世界の農場数の90%以上が家族農業である
家族農業は世界の農地の70~80%を耕している
世界の食料の80%以上を家族農業が供給している 

なかなかメディアで見ることのない数字だが、日本でも世界でも「家族農業」が主流。

家族農業が占める割合(97.6%)
林業センサス(2015) 

スマート農業や植物工場が脚光を浴び続ける中、これが私たちの食を支える実態。

「家族農業」を無くしては私たちの食の安全保障は実現できない。
 

ウガンダで見た衝撃

f:id:goldenfish8:20210124181507j:plain

プランテーションと製糖工場
私自身、2012年4月にマンチェスター大学院在学中に、授業の一環であるフィールドワークでウガンダのある農村に出掛けた。
広大なサトウキビのプランテーションを訪問し、農地の中でウガンダ人が栽培を手掛ける光景を目の当たりにした。
さらに農地の奥へ進むと巨大な工場が白煙を上げて稼働していた。
インド人による海外投資で作られた製糖工場である。
小規模農家であるウガンダ人は資本家のインド人との契約のため、サトウキビのプランテーションを余儀なくされていた。
農家に話を聞いてみると、信じがたい言葉の数々を耳にした。
「契約により5年間はサトウキビ以外の作物を栽培できず、自分の食べる食糧を作れない。」
「最近ではサトウキビの卸売価格が下げられてしまい、将来が見えない。」
「自分たちでは到底買えない栽培に必要な機械を借りているため依存関係から抜け出せない。」
本来、広大なサトウキビ畑はウガンダ人の所有する農地のため、何を作るかは自由であったはずだ。
恐らく契約当初、サトウキビに農地を転用すれば、今よりもお金が稼げて生活が豊かになるとそそのかされたのだろう。
確かに、二束三文でしか市場で取引されない主食のバナナやトウモロコシより、サトウキビの方が卸売単価は高いだろう。
しかし、食料自給や持続可能性の観点から考えると、サトウキビのプランテーションはデメリットが多すぎる。
 

「家族農業」は実は効率性が高い

これまで長い間等、家族農業は「小規模」「非効率」「時代遅れ」等のレッテルが貼られてきました。 

 確かに日本の多くの田畑は米国と比較しても点在しており、大きな機械を使って作業することに向いていない。

しかし、著書によると、「家族農業はエネルギー効率性が高い」という見解である。
なぜなら、大規模農業では一人あたりの労働生産性や平米あたりの土地生産性を上げるために、大量の資材や肥料や機械燃料を投入する。
結果、大規模農業は世界全体の30%の食料を供給するために、75%のエネルギーを消費している。
一方で家族農業は、70%の食料を供給するために、25%のエネルギーしか消費していない
家族農業は、実はエネルギー効率性が高いと言える。
 

大規模農業をSDGsに当てはめると

農業機械や資材投入により、労働生産性と土地生産性を引き上げる大規模農業が数多く存在する。
その結果、下記のSDGsの達成から遠ざかるリスクがある。
目標2(飢餓をゼロに)・目標3(健康と福祉)・目標6(安全な水とトイレ)・目標12(つくる・つかう責任)・目標13(気候変動)・目標14(海の豊さ)・目標15(陸の豊さ)
大規模農業では、成育促進や連作障害回避のために大量の肥料を使い、雑草や病害虫を除去するために大量の農薬を使い、機械をフル稼働させるために石油燃料を使う。
すると、どうしても土壌中の微生物が減少してしまい、水も汚染してしまう。
近年は土壌中の微生物が減少しており、発酵食品を食べる習慣も減っていることから腸内環境が乱れ、さまざまな疾患をかかえる人が増えています。
・・・
土壌の健康と人間の健康はセットなのだということです。
土地が農地として適さなくなり使い捨てをせざるを得ないだけでなく、私たちの食へも影響してしまっている。
 

大規模農業で持続可能性を追及することは可能?

もちろん、必要最低限の農薬や肥料の使用に留め、持続可能性を追及する大規模農業も存在する。
しかし、どうしても土地や労働効率性が低くなり、資本主義においてなかなか評価され辛い。
そんな中、独自基準で農薬の使用をラベル化して、農薬使用状況を見える化により付加価値を上げる企業がある。
次回は20年以上、地道に持続可能な農業を目指す企業を紹介したいと思う。
今回参考にした著書「13歳からの食と農」は色んな重要なキーワードを分かりやすく記載されているのでおすすめです。
 

 
最後まで読んで頂きありがとうございます。