農情人:農業は「創造業」~Metagri(メタグリ)実現へ~

新たな農業のカタチの実現を目指して「Metagri(メタグリ)」をキーワードに活動

梨で儲かる農業実現へ~成長促進と高密植栽培の組み合わせ~

前回は船橋の梨農園で農家さんのお手伝いをしながら梨の奥深さを学び、複数の品種を育てる理由を紹介しました。

そこで、今回は「梨で儲かる農業実現へ」をテーマに綴ります。

儲かる農業ビジネスに興味がある方はもちろん、梨をよく食べる方は一読頂けると嬉しいです。

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噂のジョイント仕立て法

目次

 

梨農園で儲かる農業を実現するためには?

儲かる農業の実現には「売上アップ」と「原価ダウン」が必要である。
そこで、今回は「売上アップ」に絞って梨農園で儲かる農業を実現するための方法を紹介する。
梨で売上をアップさせるためには、「単価」と「収量」をアップすることが必要。

単価アップのためには需要に応じた出荷調整が肝

前回のブログで梨の品種による出荷時期の違いを紹介した。
複数ある品種の中で、いち早く旬を迎える幸水梨は8月中旬の収穫が一般的である。
しかし、単価アップのためには、供給が少なく、需要が増える8月上旬のお盆のシーズンに間に合わせることが必要。
そのためには、収穫時期を前倒しする必要があり、方法は大きく2つある。
①開花を早める
暖冬であれば、桜と同様に開花が早まり、自ずと収穫時期も早まる。
3年前の2018年は暖冬のため、収穫時期が軒並み10日早まったことも。
しかし、どうしても露地栽培だと環境依存であり、コントロールできない。
  
②植物ホルモンを茎に塗布する
そこで、1本1万円近くする植物ホルモンであるジベレリンペーストを茎に塗るという方法が存在する。
この「ジベレリン処理」によって成長が促進されて収穫時期が1週間ほど早まる。
ジベレリンは植物自体が既に持っている植物ホルモンの1種であり、茎に塗布することで効果を発揮する。
種無しぶどうを作るときにも活躍している農薬の一種である。
一般的な梨農園では、このような工夫によって出荷時期を早めて単価が高い時期に販売している。
 

収量アップのために高密植で栽培

 一般的な梨の樹の間隔は5~6mくらい離れており、それぞれの樹は独立して生育。

一方で、「ジョイント仕立て法」と呼ばれる高密植の栽培方法は逆転の発想で栽培している。

キーワードは「樹と樹をつなげる」であり、樹の間隔は1.5m程度と同一面積に従来の5倍の植樹が可能。

梨の樹どうしを接ぎ木することで相互に成長を補完し、10年近く必要とする梨の栽培期間を半分の5年で実現。

また、梨の樹が一定方向に綺麗に植わっているので、作業時間が大幅に短縮できるというメリットもある。

 

なぜ儲かるはずの農業がまだまだ実現できていないのか?

なぜ梨農家さんがこんなメリットだらけのはずの「ジョイント仕立て法」を実施していないのか?

それは、「ジョイント仕立て法」実現のためには、どうしても新しく梨を植樹する必要があるからだ。

梨の樹は植えてから数十年にも渡って果実を収穫し続けることが可能な果樹である。

年を経るごとに樹が太くなっていき、強い樹に成長していき収量も比例して増える。

梨の寿命は長く、90年近く育てている農家さんもいらっしゃるほどである。

 

www.jimdo-journey.com

そんな大事に育てた樹を切り、新たに樹を植え直すことを考えると既存の梨農家さんがこの画期的な栽培方法に舵を切ることはなかなかないと考える。

 

そのため、「ジョイント仕立て法」に挑戦するのは新規の就農者か、

既存の梨農家さんであれば、造園で新たに梨の樹を植える場合や、寿命を迎えて植え替えるときに限る。

 

まずは現場を見てみることが最初の一歩

 とは言いつつも、新規で梨の生産により「儲かる農業」に挑戦する場合は、今回紹介した「ジベレリン処理」×「ジョイント仕立て法」は重要なキーワードである。

この組み合わせにより、単価と収量アップを実現し、結果的には売上アップに繋がる。

 一度、先進的な取り組みに挑戦する梨農園を見学したいという方や、栽培作業を経験したいという方は下記のフォームより登録いただけると幸いです。

現場に出ることで色んな学びや知見が得られることは間違いないです。

airtable.com

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

梨の栽培作業を手伝いながら梨の奥深さを学ぶ

梨の出荷は夏からであるが、5月は梨の摘果作業や成長促進のためのジベレリン処理など、何かと作業が立て込む。

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知れば知るほど面白い「梨」という果実
作業のピークを迎えるいま、近所の船橋にある梨農園でお手伝いをする経験を得た。
なかなか経験することの無い梨の栽培作業を通して知った「梨の奥深さに」を綴る。
梨が大好きな方はもちろん、農業において重要な考えも含んでいるので、農業や食に興味のある方は一読頂けると嬉しいです。
 
目次

実はたくさんある梨の品種

皆さん、梨を買うときに品種を意識したことはありますか?
現在、日本では「梨」とひとことで言っても20種類の梨が存在する。

https://www.city.inagi.tokyo.jp/kanko/kanko_tokusyoku/tokusan/NASHI.images/jiki.jpg

稲城市役所からの資料を転用*1

 

今回、私がお手伝いに行った船橋市内の梨農家さんの農園では幸水・あきづき・豊水を生産している。
品種が変わると栽培方法が変わり、栽培管理が難しくなるにも関わらず、なぜ梨農家さんはわざわざ複数の品種を作るのか。
 

苦労してまで複数品種を栽培する理由

理由は大きく3つある。
1.顧客満足度の向上
2.出荷時期の平準化
それぞれ詳しく説明していく。 
 

1.顧客満足度の向上

私自身、梨の食べ比べをすることはないが、品種によって硬さや味わいが異なる。
例えば、日本全国での流通量が最多の「幸水梨」は酸味が少なく甘い梨である。
重量は300g程度であり、梨の中では中ぐらいのものである。
一方で、「豊水梨」という「幸水梨」の掛け合わせで生まれた品種は酸味が強い。
重量は「豊水梨」より一回り大きく、大きいもので500gのものも存在する。
このように品種によって味や大きさが異なるので、多種多様な顧客の好み合わせて複数品種を生産する農家さんが多い。
 

2.出荷時期の平準化

梨の収穫時期は8月~10月であるが、品種によって旬が異なる。
8月のお盆にお供え物として梨を購入する方は多いが、この時期に収穫する品種は「幸水梨」が主である。
農家さんによっては出荷時期を前倒しするために、「ジベレリン処理」により1週間ほど前倒しするテクニックも存在。
今回のお手伝いでは、この「ジベレリン処理」である。
作業はシンプルで、子どもの梨の茎に油に包まれた薬剤を塗るというものである。
一方で、「あきづき」という梨の品種は名前の通り、9月中旬の秋から旬を迎える。
このように出荷時期をずらすことで、作業のピークを減らして、長い期間、販売できる体制を作っている。
 

3.リスクヘッジ

複数品種の生産は、天候や病害虫に対するリスクヘッジに繋がる。
例えば、大ぶりの梨として紹介した豊水梨は「みつ症」という病気を発症しやすい。
人体に害はなく、梨自体は食べられるが、果肉が半透明になり腐っているように見えるため規格外扱いとなる。
実は、この「みつ症」という病気は昨年に千葉で例年より多発した病気である。
原因は7月に低温が続いた上に、梅雨が長かったためである。
品種によっては、こういった気象の変化により影響を受ける。
そのため、複数の品種を栽培することによりリスクヘッジに繋がる。
持続可能性の追及には品種の多様性は欠かせないキーワードである。
梨だけでなく、あらゆる作物において品種の多様性を実現することで、我々にとっても飢餓に対するリスクヘッジとなる。
 

過去から未来へ繋ぐ新品種の存在

都道府県では、生産と販売の観点から新品種の開発を粛々と進めている。
実は、生産量No.1の千葉県が22年ぶりに新品種を開発した。
その名は「秋満月(あきみつき)」である。
千葉県知事である熊谷さんも昨日、ブログで紹介するほどの注目品種である。
特徴は、豊水より大きい上に、高糖度であり日持ちがするという点である。
噂によると、常温で約1ヶ月も日持ちするため、他の梨よりも販売期間を長くすることが可能そうである。
上市はこれからであるが、どんなものか今から楽しみである。
今回、お手伝いさせて頂いた梨農園でも少しお試しで生産しているとのことであった。
また、改めて新品種のお話を聞いてみたいと思う。
品種についてさらに詳しく知りたい方はこの本がオススメです。

  
次回は「梨の高密植栽培と成長促進で儲かる農業へ」をテーマに綴るので
ぜひ、期待していてください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

農業は掛け算で儲かる事業に~電気×貸農園×IT~

前回はソーラーシェアリングが地域のインフラになるをテーマにSDGsとの親和性を紹介した。
今回は「農業に電気と貸農園とITを掛け合わせる儲かる農業への道」をテーマに綴る。

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新たな領域へ
目次

掛け算により儲かる農業へ

以前、著書「金儲けのレシピ」をもとに、様々な儲かりのレシピと農業を掛け合わせて事業アイデアを紹介。
農業は種をまいて栽培して出荷するだけでは利益を出すことが難しい。
今回は農業に次の3つの要素を掛け合わせて「儲かる農業」を創造する。
1.電気
2.貸農園
3.IT
 

1.電気

農業×電気として「ソーラシェアリング」が2013年より農水省の許可により実現可能となった。
ビジネスモデルとしては「上で電気を、下で農作物を売る」ことにより、農地から2つの収入を実現する。
商標のプロフェッショナルであるべんりしほっしーさんの音声配信が分かりやすいので、ぜひ聞いてみてください。
ソーラシェアリングのメリットは太陽光パネルの下で農作業が出来るため、暑い時期でも日陰で快適に作業できる点。
しかし、ソーラシェアリングのデメリットは何と言っても初期投資が莫大なため、投資回収に課題がある。
 

2.貸農園

みなさんは近所で貸農園を見かけたことがあるでしょうか?
農家さんが所有する畑を区画分けして、個人の方々に貸し出して利用料を得る仕組み。
都市近郊であれば、「シェア畑」や「ふるさと農園」のようなサービスがある。

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シェア畑の様子
 私の場合、家から5kmのところに「シェア畑」があり10m2のサイズで借りている。
スコップやハサミなど作業に必要な畑にあるため、手ぶらで行けて楽しめる点が便利である。
指導員の方が畑にいらっしゃるので、栽培で不明点あれば親身になって教えてくれるという手厚いサポート付き。
畑を転用するだけで運用可能なため、個人でも初期投資は少なく始められる点がメリットである。
コロナ禍で外出自粛が続く中、畑という癒しのスポットの存在は大きく需要が増加している点も追い風。
ソーラシェアリング×貸農園で個人が農地の一部の権利を持つ仕組みの構築には可能性を感じる。
 

3.IT

最後にITの力を掛け合わせることで儲かる農業を締めくくる。
現在、ITの力で農業界を変えるべく、「食べチョク」という産直販売サービスや「農mers」という人材マッチングアプリが台頭している。
ITの力を「ソーラシェアリング×貸農園」に掛け合わせることで、会員制農園システムを構築する。
サービス内容は、アプリでユーザーが家からでも生育状況を確認できるというもの。
農園管理は全てスタッフが担い、収穫時にユーザーは農園へ訪問し、自由に新鮮な野菜を持ち帰るという仕組み。
会員ステージはいくつかの価格帯を準備して、ステージごとに収穫対象区域が定まる。
最近では、アプリ構築のハードルはどんどん下がっているので、数万円の資金で短期間にサービス構築が可能。
 
このように農業にあらゆる掛け算を提案することで儲かる農業を実現す事業を実現化していきたい。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございます。

農業はインフラ産業~農作物だけではない農業の可能性~

昨日は「農業は農作物を作るだけではない」をテーマにソーラーシェアリングを紹介した。
今回は「ソーラーシェアリングは地域のインフラとしての機能を果たし、SDGsとの親和性も高い」をテーマに綴る。

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ソーラーシェアリングの可能性
 
目次

 

SDGsとの親和性の高さ

17の目標のうち、少なくとも下記の7つには該当すると考える。
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
11.住み続けられるまちづくりを
13.気候変動に具体的な対策を
17.パートナーシップで目標を達成しよう
ソーラーシェアリングは農作物を作る上に、クリームなエネルギー供給にも貢献するためこれからの時代に適していると考える。
一方で、巨額投資が必要な事業だが、利益はそこまで大きくないため、地域のインフラとしての付加価値に着目して広げていく必要があるかもしれない。
 

地域のインフラとしてのソーラーシェアリング

SDGsの「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「13.気候変動に具体的な対策を」に着目。
今回訪問した「つなぐファーム」がインフラとしてのソーラーシェアリングを意識し始めたのは、2019年9月9日に大型台風が千葉を襲ったことがきっかけ。
当時、災害によって地域で停電が相次ぐ中で、「つなぐファーム」は太陽光発電しているものの、何も貢献出来なかったという苦い経験がある。
もちろんそのときは、電力会社も稼働しておらず、売電自体も出来ず、電力は垂れ流しであった。
その悔しい気持ちをバネにして、現在では、自家発電で電気自動車や草刈り機のような電動農機具を導入し、地域の停電対策にも力を入れている。

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自家発電用の太陽光パネル
これからは「災害時におけるバックアップとしてのソーラーシェアリング」というキーワードで市役所へ提案していくと考えられる。
 

地域住民の巻き込みもキーワードに

SDGsの「3.すべての人に健康と福祉を」「11.住み続けられるまちづくりを」に着目。
ソーラーシェアリングの持続可能性を考えると、地元の方々の協力で地域一丸となることが不可欠。
ただ単に、電気と農作物を売るだけではなかなか事業は続かない。 
「つなぐファーム」では定期的にジャガイモの植え付けや収穫祭のようなイベントを定期的に実施している。
これからは地域の方へ、畑の区画貸しや年パスのような形式で収穫し放題を提供することを考えているとのこと。
「地域の方々が集う場としてのソーラシェアリング」はこれからの新しいテーマ。
実は、来月の6月21日は「太陽光発電の日」として、北半球で一年の中で日照時間がいちばん長く、太陽の恩恵をいちばん受ける日である。
そんな記念日とも掛け合わせながら、認知度や存在感を高めていくことが重要。
私自身も、地域のインフラや教育の観点でソーラシェアリングを広げていくお手伝いをしていきたい。
 
次回は「ソーラーシェアリングにシステムを掛け合わせる」をテーマに綴るので楽しみにしていてください!
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

農業は農作物を作るだけではない? 絶対に不可欠な○○も一緒に作る農業

みなさんは「ソーラーシェアリング」という言葉をご存知でしょうか?

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新たな農業スタイル
農業は農地で農作物を作って販売することが一般的だが、電気を一緒に供給するビジネスモデルが存在する。
今回はそんなソーラーシェアリングを2017年から事業化している「つなぐファーム」を訪問。

www.tsunagufarm.com

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右肩下がりの売電価格と右肩上がりの許可件数

ソーラーシェアリングの元となる技術は今から20年ほど前から存在。
しかし、農地に太陽光発電設備を設置することに対して農林水産省は許可するまで時間を要した。
なぜなら従来の法律では「農地を農業以外の用途に使うことができなかった」からである。
今でも農地に太陽光発電設備を設置するためには許認可申請が必要であるが、全国に拡大していき1000件を超える。
一方で、売電価格は2021年現在では、2013年に比べて半値であり、毎年の下落基調は止まらない。
発電事業の新規参入に関してはそろそろ転換を迎えているのかもしれない。

ソーラーシェアリングNo.1の○○県

ソーラーシェアリングの許可件数No.1の県は実は千葉県である。
許可件数件数としては既に300件を超える。
千葉でソーラーシェアリングが活発な背景には「つなぐファーム」の親会社である「千葉エコ・エネルギー」の存在が大きいと考える。
当社は匝瑳市において恐らく日本一の規模のメガソーラーシェアリングに投資。

agrijournal.jp

メガソーラーシェアリングには3億円を超える総投資額だが、年間の売電収入だけで約4700万円であるため、10年程度で投資回収できると予想できる。
当社の方針としては、自社で事例を作りながら新規参入者のサポートを担う。
 

ソーラーシェアリングに参入する3つのパターン

ソーラーシェアリングの特徴は必ずしも、発電設置者と営農者が同一でない点である。
そのため、事業パターンとして下記の3つが存在する。
1.電気だけ作り、農作物は作らない
2.農作物と電気を作る
3.農作物だけ作り、電気は作らない

実は、「つなぐファーム」では1~3の全てを担った経験があり、その点が当社の大きな強みである。当社の経験を踏まえてそれぞれを簡単に説明する。

1.電気だけ作り、農作物は作らない

先ほど紹介した、匝瑳市のメガソーラーシェアリングがこのパターンである。
太陽光パネルにだけ投資して、農地管理は別の会社が担う。
農地管理は有機農業の経験のある若手集団により結成された「Three little birds」が担い、広大な土地で大豆や麦を生産する。
メガソーラーシェアリング事業に関わりながら、農地管理の可能性を見出し、農業法人「つなぐファーム」設立に至ったと予想できる。
 

2.農作物と電気を作る

今回訪問した、千葉市にある「つなぐファーム」が運営する圃場が正にこのパターンである。
2017年から1ha規模での栽培を開始し、現在ではジャガイモやニンニクやナスやレタスなど多種多様な作物を生産。
ここで培ったノウハウや経験を今回いろいろとお伺いしたので後段で説明する。

3.農作物だけ作り、電気は作らない

「つなぐファーム」は上記の経験を踏まえて、営農者として太陽光パネルには投資せずに農作物の生産を請け負う。
このスキームのメリットは、農作物の販売収入と発電設置者が支払う交付金の2つの収入源がある点。
このように、3つのパターンの事業を推進する中で、新規参入者のサポートを担い、ソーラーシェアリングを普及させていくことを目標としている。

 

露地栽培でも施設栽培でも無い新たな栽培ノウハウ

ソーラーシェアリングにおける栽培の特徴は何と言っても、農地の上に太陽光パネルがあるため、影ができてしまう点。

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太陽光パネルのすき間に差し込む光
遮光率の観点から比較すると、
「露地栽培」だと作物の上には何もないため、遮光率0%
「施設栽培」だとハウスを覆うビニールの汚れや鉄パイプが陰となり、遮光率10~20%程度
「ソーラーシェアリング」はパネルの間隔にもよるが、遮光率40~50%程度
また、施設園芸とは異なり、周りがビニールに覆われていないため、基本的に温度・湿度・CO2のような環境制御は無い。
そのため、露地栽培や施設栽培とは環境や条件が異なるため、栽培作物の選定や栽培方法が大きく異なる。
「つなぐファーム」では3年以上の栽培経験を踏まえて、独自のノウハウを築き上げ、圃場のいたる所に工夫があった。
例えば、遮光率が高いことで、晴れていても土壌の渇きが遅いため、水を好むレタスやナスのような作物を選定する。
また、雨が降って止んだ後に太陽光パネルから滴る水滴による「泥はね」防止のために防虫ネットを使う。
様々な作物を試行錯誤しながら育てて課題を追及し続けたからこその他には無い工夫が詰まっていた。

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堆肥は緑肥でまかなう
今後はそんなノウハウを武器に新規でソーラーシェアリング事業に参入する方々をサポートしていくことが目標である。

 

次回は「SDGsとの親和性」や「災害対策」をキーワードに綴るので楽しみにしていてください!
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
 
 

農業は儲かるのか?~ユダヤ人大富豪の教え~

「農業って最近、テレビやメディアで注目されているけど儲かるの?」

私自身、最近、こういった質問を受けることが増えている。

恐らく、ベンチャー企業による農業分野への参入が増加して、新たな仕組みで農業課題を解決するサービスが増えていることが背景にあると考える。

そこで、今回は「農業は儲かるのか?」をテーマに綴る。

 

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儲かるかは農業の捉え方次第

私の見解では、「農業を製造業」として捉えて、農作物を生産して売るという考えでは儲からないと考える。

一方で、「農業をサービス業」と捉えて、コアとなる顧客を喜ばすことに専念すれば、儲かる農業を必ず実現できる。

 

ユダヤ人大富豪はコアファンを大事にする

みなさんは「ユダヤ人大富豪の教え」という本を読んだことありますか?

この本は、ベストセラー作家の本田健さんが2003年に執筆した著書で、既に100万部を突破している。
私自身、ことあるごとに何度も読み返しているバイブルである。
本書の内容は、主人公のケンがアメリカに行き、ユダヤ人大富豪の老人との対話をもとに展開していく。
老人は自身の経験をもとに、ケンとの対話と実務を通して大富豪のマインドを育む。
その中で、大富豪になるための「営業」に対する考えが紹介されている。
重要点はいかに、核となる顧客を見つけて、その顧客を逃がさないことである。
一度、核となる顧客を作れば、その顧客の口コミで営業をしなくても売れ続ける仕組みができる。このサイクルに乗ればトップセールスになれるというものである。
これが大富豪になるための肝である。
ケンは、この考えを体現するために、電球1000個を1ドル以上の価格で3日以内で売るという試練を乗り越える。

農業をサービス業として展開するために

では、農業を製造業ではなくサービス業として、どのように核となる顧客を獲得して、価値を提供するべきか?

郵便局で飛ぶように売れるトマトを作る農家

ここで、山口県宇部市でトマトを生産する農家さんを紹介する。
その農家さんは生産したトマトをスーパーではなく郵便局で販売している。
郵便局ではトマト以外の農作物を売っていないにもかかわらず、顧客はトマトを買うためだけに開店前から並んでいる。

最近では事前に整理券が配られるほどの賑わいぶりである。

私自身、郵便局で飛ぶように売れているトマトの様子を写真で撮っていたら、常連の顧客に「これ以上情報を広めないで欲しい」と警告されたほど顧客は熱狂している。

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こだわり抜かれた絶品トマト
顧客に並んでまでして買う理由をヒアリングしたところ、「食べるのは自分だけでなく、孫や家族と美味しさを分かち合えるトマトだから」とのことであった。
特に、常連の顧客からは、トマトの詰め合わせを友人や知人のところに直送したいという依頼もよくある。

人に紹介したくなる厳選の完熟新鮮トマト

なぜ、ここまで顧客の心を掴んで離さないトマトが存在するのか?
トマトを生産する農家さんは、トマトを出荷するにあたり、美味しいトマトを作るのはもちろん厳しい出荷基準を設けている。常人では分からない、色味や形を目で判断して厳選したトマトのみを出荷している。
また、一番美味しい完熟で新鮮な状態で提供するために、採れてから24時間以内に顧客に届くように徹底している。
この厳しい独自の出荷基準と最高の状態で届けるというこだわりによって、顧客が家族や友人に紹介したくなるトマトとして売れ続けている。
いいものをプレゼントすると、受け取った人はもちろん、プレゼントした人も嬉しくなるところがこのトマトのサービスであるかもしれない。
実は、プレゼントは貰う人より贈る人の方が幸福感が高まるという研究結果もある。
 

ファームコダワリーではギフト用農産物のみを扱う

現在、新サービスとして 「ファームコダワリー」というこだわりの一品のみを扱うプラットフォームを立ち上げている。
 
今回紹介したトマトのように、限られた農産物のみを扱うため、購入者は「招待制」として、知っている人だけが登録できる仕組みとする。
そして、購入者は贈答用として、大切な家族や友人のために購入することができるサービスに育てていく。
既存のサービスとの差別化は、「出品・購入手数料ゼロ」「市場には出回らない一品を扱う」ところである。
マネタイズのポイントとしては、「ファームコダワリー」に出品頂く農家さんへの農業や作業の効率化に繋がるシステム導入であったり、こだわりの購入者に対する広告提供による収入を考えている。 
 

まだまだある「儲かる農業」

農業を「サービス業」として捉え、コアファンを増やしていくことが儲かりのポイントである。
私のブログ内でも儲かる農業を実現する農家さんを紹介しているので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

villagehunter.hatenablog.com

villagehunter.hatenablog.com

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

農家さんから直接買うときの壁は○○

家に居ながらワンクリックで欲しいものを注文する時代。

しかし、農作物をワンクリックで買うことはまだまだ一般的になっていない。

農家さんから農産物を直接買った方が新鮮で美味しいのに、なぜ未だに一般化できていないのか?
今回は 「農作物の産地直送が普及しづらい理由」をテーマに綴る。

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産地直送が普及しない理由

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産直農作物が普及しづらい理由

コロナ禍を追い風に外出が減り、おうちごはんの機会が増えた結果、食材にこだわる人がどんどん増えている。
農家さんもECサイトを手軽に作れる仕組みや食べチョクのようなプラットフォームが普及したお陰で、市場を通さずに直接、購入者へ販売しする方が増えている。
しかし、まだまだ一般化されていない理由は大きく2つある。
それは、①農家さんの手間と、②右肩上がりの物流費である。
 

1.意外と手間がかかる個配用の荷造り

一般的に青果市場やスーパーに卸す場合は、規格を揃えて、同一の品種ごとにドカッとまとめて箱詰めする。
一方で、ECサイト経由で各個人の顧客から注文を受けると、農産物は出荷先ごとに異なることが多々ある。すると農家さんが収穫した農産物を、一つ一つ丁寧に分類して梱包する必要がある。
旬の野菜の詰め合わせなど、農家さんによっては商品数を絞って販売する場合もあるが、出荷先が複数にまたがると配送日数もバラつき管理は複雑化する。
 
自動仕訳や荷造りを自動化する機械を導入すれば話は別だが、個人で買って投資回収出来るような代物は今のところ存在しない。

2.無視できない物流費

また、各家庭に直送する場合、物流費は市場経由でスーパーへの販売に比べてかなり高くなる。
例えば、ヤマトのクール便の場合、トマト10玉を個人に送るため、60サイズの小さい箱を使っても1000円以上かかる。
10玉で割ると、一玉100円以上かかって、卸売市場を通してスーパーまで送る費用と比べると10倍ほどかかる。
この費用を負担するのは、結局は購入者である。
 

産直の一般化に向けた課題解決のために

では、産直直送で届けるには、農家さんは手間をかけて、購入者は割高な費用を負担しないといけないのか?
ここで、2つの可能性を感じる解決策を紹介する。
それは、「やさいバス」「自動配送ロボット」である。
 

有りそうで無かった「やさいバス」

みなさんは「やさいバス」というサービスを聞いたことがありますか?
仕組みとしては、農家さんはやさいバスが指定する近所の野菜専用バス停まで野菜を持参すれば、購入者の近くにある専用バス停まで運んでくれる。
バス停の特徴は、道の駅や卸売業者の倉庫などがあり、驚くことにスーパーも含まれている。
そのため、スーパーも「やさいバス」に乗ってきた新鮮な野菜を取り扱う。
「やさいバス」というサービスは有りそうで無かった仕組みであり、現在2021年時点では全国10か所に展開。
今後も日本全国に広がっていくと予想できる。

近い将来は自動配送ロボットが活躍する時代

さらに将来的には、ロボットによる自動配送が活躍する日も近いと感じる。
実は、岡山と茨城では既に実証実験もスタートしている。
「Loogia」というシステムを組み込まれたロボットが自身で最適なルートを弾きだして、集荷と配送を担う。
実証実験段階ではあるが、実用化すれば、一般的な物流はもちろん、農業界も大きな恩恵を受ける、
実は、農家さん自身が配送に多大な時間をかけることもあるため、配送時間が無くなれば、生産管理に注力でき、農業が儲かる産業に育つ可能性を秘める。
それだけ、農業において物流は大きな役割を占めている。
新鮮な農作物を安価に手に入れたい私たちとしても、物流課題の解決はとても大きな恩恵を受ける。
 
今回も最後まで読んで頂きありがとうございます。